written by みさやんさま




EVERY BREATH YOU TAKE
 〜束の間の休息〜



<1>



パリ、マレ地区。
老婦人が経営する小さなホテル型アパルトマンの一室。

シャワーを終えパジャマに着替えたフランソワーズは、ベッドサイドに座ると、その隣のテーブルに置いてあったカップに口を付け、 ほっと息をはいた。
アイスミルクティの甘い香りと味が、風呂上りの火照った身体に安らぎをもたらす。

ベッド上にある中庭に面した小窓からは、まるで一枚の絵のような星空が見えていた。
フランソワーズは小窓から見える景色を、ぼんやりと眺める…。
夜空にはグレープフルーツのような丸い月が、ぽってりと浮かんでいた。
美しい光景に、身体が吸い込まれるような不思議な感覚を感じながら、 フランソワーズは、毎日この「額縁から見える絵」が違う事にふと気がつく。
ここを設計した人物は柔軟な発想を持っているらしく、部屋にいながら外の景色をインテリアの一部のように楽しめる造りに、 フランソワーズは心の中で感嘆した。



今朝、パリに着いたジョーとフランソワーズは、『ある一つの使命』を終えると、外で軽く夕飯を済ませ、このアパルトマンにチェックインした。
今日は、朝から移動と到着を繰り返し、そして、これからの自分達の未来に、何かしら関係してくるかもしれないような重要な人物に会い、 やっと一息ついた頃には、空に星が出ていた。
ジョーと二人だけで行動していたにも関わらず、今朝からジョーとは、ほとんど日常会話をしていない。
最も、フランスへは旅行に来たわけではなく…、日常会話をするような、そんな雰囲気ではなかったのだが、最近はジョーとの会話が無い日は寂しくも 感じる彼女にとって、自分を気遣うジョーからの、『…寒くない?』というその一言は、嬉しいものだった。
それは、レンタカーを所定の駐車場へ返し、パリの街を歩いていた時だった。
日中に比べると気温が下がったパリの街で、フランソワーズが着ている防寒服といえば薄手のコート、そのコートの裾や襟元が夜風で揺れた時である。
ジョーは、『…寒くない?』 と、尋ねてきた。
フランソワーズにそう尋ねてきたジョーの表情は優しく、その時になってやっと今日初めて、ジョーとの間の空気が丸くなった、と感じたフランソワーズは 内心、安心し、そして心の中に温かさを感じた。
ジョーが自分にむける優しい目元に嬉しさを感じ、そして安堵するようになったのは、いつ頃からだったんだろう? 
話しかけられると、魔法にかかったみたいにすっと心が軽くなるのは何故なんだろう…。 と、フランソワーズは思う。
フランソワーズは、コートの胸元を手で押さえると、『大丈夫よ。寒くない…』 と、答えた。




フランソワーズは、ミルクティを飲みほしたカップをテーブルに置くと、身体の疲れを感じ、座っているベッドにゴロンと横になった。
そんな彼女を、月明かりが優しく見守る。



フランソワーズ




天井が高く、ロフト風の造りの室内は、木の温もりを活かした落ち着いた色合いの家具や、雑貨でシンプルに統一されている。
室内には僅かにローズウッドの香りが漂っているはずなのだが、それに気がついたのは最初だけで、今はもう鼻が慣れてしまい、その香りが感じられない。
センスの良い部屋の中は、1Fに、キッチン、リビング、シャワールーム、バス・トイレがあり、木の階段から続く、ロフト風の2Fの小さな就寝スペースには、二つのベッドがなんとか並んでいるといった様子だった。今、フランソワーズはこの2階の部屋の部分を一人で使っていた。

フランソワーズは、天井に仰向けになると、背伸びをして深く深呼吸をした。

「静かな夜…」

小さな声でポツリとそう呟く。

大通りから外れた細い路地を入った場所にあるこの建物の中にいると、外を走る車の音はほとんど聞こえてこない。
聞こえるのは…、
下のソファーで眠る、ジョーの規則正しい呼吸の音だけである。
フランソワーズは、身体を横に向けると、空いている隣のベッドをチラリと見て、 呆れたように (…博士ったら) と、改めて内心思い、静かに溜息をついた。

この宿を決めたのはギルモア博士だった。
博士は研究については非常に細かく物事を調べるのだが、それ以外の事については無頓着である場合も多い。
この部屋についても、よく確認しないままであった可能性が高い。
この部屋のベッドが、僅かな隙間しかない状態で二つ並んでいるなんて思いもしなかっただろう。
フランソワーズは、部屋に入った時の事を思い出していた…。



***



アパルトマンに到着した二人は、管理人に鍵を貰い、四階にある部屋へ向かった。
そして中に入り、実際に部屋の造りを見た時、博士に聞いて予想していた造りではないこの部屋の配置に、二人は一瞬、無言で互いを見つめた。
狭い空間に並んだ二つのベッドはほとんど隙間がなく、ダブルベッドかと思った程である。
仲間とはいえ男性であるジョーと二人、この部屋で3日間、どういうふうに過ごすというのか…、兄と二人で暮らしていたあの頃とは勝手が違う。と、フランソワーズは思っていた。

室内を見て呆然と立ち尽くす二人の背後に、遅れて階段を上ってきた老婦人が部屋の中に入ってきた。
老婦人が持っている皿の上には、綺麗な形のチョコレートが上品に並んでいる。

「チョコレートが好きなのよ、エスカルゴの形のがオススメよ。…遠いところ、お疲れでしょう。後でお一ついかが?」

老婦人は、白と黒のマーブル模様の貝の形のチョコレートを指差すと、それをフランソワーズに勧めた。
鍵を渡したらそれっきり…、というホテル型のアパルトマンが多い中で、珍しい配慮だった。
行動から推測するに、管理人は人懐っこい人物なのだろう。
ふくよかな丸い顔に笑いシワを浮かべて、老婦人はそこに立っていた。

「ええ、有難う。とても美味しそうね」

フランソワーズが管理人に返事を返すと、老婦人は嬉しそうにまた微笑んだ。そして今度はジョーに話しかけた。

「…島村さん、このリーフ形のペパーミントチョコはあなたにオススメするわ」

「あ、どうも…」
「チョコはね、好きな時にポイと口に放り込むのよ。甘い香りと味で、一時だけど嫌な事はすべて忘れるの。私は若い頃から大好き。
ここに置いておくわね。それから、この部屋は自分の家のように好きに使って下さいね。 私はあとはもうお邪魔しませんから、何かあれば何時でも御連絡下さいね」

老婦人は丸い木のテーブルにチョコレートのトレーを置いた。
部屋を出て行こうとした老婦人に、ジョーとフランソワーズはお礼を言うと、ジョーは部屋の隅に置かれた赤いソファーに腰掛けた。

老婦人が部屋を出ていくと、フランソワーズはジョーに話しかけた。

「雰囲気の良い御婦人ね」
「うん」
「ねえ、この部屋だけど…、どうする?」
「…寝る場所、だよね?僕は、君が嫌でなければここで寝るから。もし同室がマズイようなら、僕は今から近くの安ホテルに予約いれるよ」

ジョーは座っているソファーを指差しながらそう答えた。

「嫌だなんて、そんな…。一緒にここにいましょう?」

「…良いの?」

「良いわよ。あ、でも…もし、私がいる事で不都合があれば言ってね。ほら、着替えとか…」
「僕の方こそ、配慮を忘れていたら言ってね」
「ええ、分かったわ」

「じゃあ、三日間よろしく」
「こちらこそ」

「あ、それから…、君は上のベッドで寝てね」

「…ええ…。じゃあ、今日は上を使わせて貰うわ。明日はジョーがベッドを使ってね」

「うん…」



ジョーはもともと、二階のベッドを使うつもりはなかったが、ここで遠慮すると話が終わらないと思った彼は、とりあえずそう返答した。
ベッドの話が出たところでフランソワーズは、(ジョーは今晩は眠れるのだろうか?)と思っていた。
ジェットから聞いた話しでは、ジョーは『この身体』になってからは、まともに眠れていないようだからである。
フランソワーズは、甘い物は疲れを癒すという事を思い出し、チョコレートに手を伸ばした。

「ねえ、ジョーもいかが?」

そうジョーに話しかけると、エスカルゴの形のチョコレートをポイと口に放り込んだ。

「美味しい…」

「うん。後で貰うよ。…口に合って良かったね」

「うん。チョコは大好きなの。あ!…今、お茶を入れるわね。ジョーは、そのまま座ってて」

「あ…、でも、僕には気を使わないでいいよ」

「分かったわ。でも私も飲みたいの。アイスストレートティーにする?それともホット?」
「…じゃあ、冷たいストレートティをお願いします」
「砂糖抜きよね?」
「うん」
「多めに作って冷蔵庫に入れておくわ」
フランソワーズは、エプロンを身に着けると、持っていたコームで、肩まで下がった髪を夜会巻きのように軽く後ろに束ねた。

「…うん、ありがとう」

会話が途切れ、フランソワーズがキッチンに立ち、お茶の用意を始めてからも、ジョーの視線はずっとフランソワーズを見ていた。
キッチンに立つフランソワーズを見たのは初めてではないが、こんなに穏やかな表情でキッチンに立つ彼女を見たのは初めてだった。
ジョーは、彼女の美しい亜麻色の髪と、スタイルの良い後姿を見つめる。
キッチンの上の照明が、彼女の長い睫毛と、艶のある口元を照らし、美しい顔の輪郭を、さらに映えさせる。
ジョーはお茶の用意をするフランソワーズの横顔に、しばし見惚れていた。
エプロンを着けてそこに立つ彼女の姿は、あまりにも自然だった。
そんな姿に、(フランソワーズは、戦場になんているべき女性じゃないのに…)と、ふと思うと同時に、どうしようもない、どうしようも出来ない、 そんな切なさが彼の心に息づく。

しばらくフランソワーズの横顔を見ていたジョーだが、彼女に対して新鮮さと気恥ずかしさを感じた自分に気がついた彼は、 フランソワーズから視線をそらした。
あんまり見ていると、フランソワーズが振り向きそうだから…、というのも視線をそらした理由の一つだった。
胸の心臓がトクン…と鳴る。

(…なに思ってんだ…、僕は……)

キッチンの壁にかかっている時計の時刻は、丁度21時を知らせていた。

「ねえ、ジョー…、先に入って良いわよ…」

フランソワーズはグラスに氷を入れながら、ジョーにそう話しかけた。

「え?」

フランソワーズの声の響きに、また別の鼓動を感じる。
内心では、(あんまり意識するな…)と、先程から自分にそう言い聞かせているのだが、心臓のリズムばかりはコントロールが出来ない。

「ジョー、時計、見てたでしょ?」

フランソワーズは、ソファーに座っているジョーの方へ顔を向けると、そう問いかける。

「え…?…時計?あ、う…ん。見てたかも…。そう、時計ね」

「ギルモア研究所では、いつもならジョーがお風呂に入る時間だものね」

そういえば、そうだった。とジョーは思った。
ここ数ヶ月、メンバーは研究所で寝泊りすることが多かった。
ギルモア研究所の風呂は大浴場ではないため、風呂は各自順番に入浴していた。
たまたまではあるが、夜の21時頃は、ジョーがよく風呂場を使っていたのである。

「君は?」
「後で良いわ。もうちょっと部屋でゆっくりしたいの」

「…じゃあ、先にシャワーを使わせて貰うね」
「うん」

ジョーは、鞄から着替えのパジャマを取り出すと、キッチンの奥にあるバスルームへ向かった。
フランソワーズの後ろを通り過ぎようとしたとき、一瞬だけ彼女の香りを感じたジョーは、その香りに誘われるように、 ふとフランソワーズの方を振り向いた。
束ねそこねた僅かな亜麻色の髪が、うなじに垂れている。
一瞬、手に持っていたパジャマを落としそうになったジョーは、急いでその場を通り過ぎると、バスルームのドアを開け、中に入った。

着ている服を脱ぎながら、頭ではフランソワーズの姿を思い出していた。

(時計も見てはいた…。だけど…、時計の方はなんとなく視界に入っていただけで、…ほとんどはフランソワーズを見ていたんだ…)

以前からフランソワーズが危険な目に合っていないかという配慮で、ミッション中はとにかく彼女の位置を確認するのが当たり前になっていたジョーの視線は、 ここ最近では、普段の生活においても、いつの間にかフランソワーズの姿を目で追っている時があるといった状態である。
そんな自分を思い出し、溜息をついたジョーは、顔の火照りを感じたまま、シャワーの栓を回した。
熱い水が、栗色の髪を濡らし、それが顔を伝い肩におち、胸におち、そして足元へと流れて行く。
ジョーは、しばらくの間、足元を流れていく水の流れを、ぼんやりと見ていた。

(…マズイよなあ…)

フランソワーズは、女性である前に『仲間』なのである。

ジョーは、これ以上の気持ちの高ぶりは、極力抑えるべきだと考えていた。
そして、シャワーから出るお湯を勢いよく身体に浴びたまま、なんとなくバスルームの天井を見上げた。
胸にあたったお湯の水滴がはじかれて、それが顔に当たるのを感じる。
ジョーは、徐々に室内が湯気に包まれて行く様子を見ながら、自然と高まってしまう胸の思いを、ぐっと押し殺すようにして、一度だけ深呼吸した。




***


この季節のパリの朝は寒い。

『これで寝るの?寒くない?』
『風呂上りだからかな?…ちょっと、いま熱くて…。えっと…、その…、寒かったら後で上に布団を取りに行くよ』
ジョーが眠ろうとしているソファーに、薄い毛布が一枚だけ用意されているのを見て、フランソワーズがジョーに尋ねた時に返ってきた返事である。

ジョーは、結局のところ、二階に布団を取りに来ていない。つまりは下のソファーに眠るジョーは、薄い毛布一枚で眠っているはずである。

(この時期、日本の朝よりも寒いのよね…)

フランソワーズは、立ち上がると、空いている隣のベッドから掛け布団を手に持ち、静かに階段を降りた。
そしてフランソワーズは、そっとジョーの寝顔を覗きこむ。

(やっぱり、寝ちゃってるわ…)

フランソワーズは、ワインレッドのソファーの上で寝ているジョーの身体にフワリと布団を掛けた。
暗い室内の方が良く眠れると思ったフランソワーズは、消し忘れている室内の明かりをすべて消した。
暗くなった室内に、まだカーテンが閉まっていない中庭に面した窓から月明かりが入ってきた。
そしてフランソワーズの影を壁に映した。

(……この感じ……)
月明かりだけの青い室内を見た彼女は、自然と兄と暮らしていた頃の自分の部屋を思い出した。

(この月明りの射し込み方…、昔の自室と似ているわ…)

この部屋を居心地良く感じるのは、このせいなのかもしれない、と、彼女は咄嗟に思った。
しばらくの間、暗くなった部屋を見回していたフランソワーズは、寝ているジョーの傍にしゃがみ込むと、その寝顔を見つめた。
彼女が近付いても起きた気配はなかった。彼は、深い眠りに落ちているらしい。
人の気配で目を覚ます、今夜はそんな鋭敏な眠りをしていない。
(ジョー……)
せめて今晩は、ジョーがぐっすりと眠れるように…、と願いながら、実際に寝てしまうと少し寂しく感じるフランソワーズ…。
目の前には、初めて見るジョーの寝顔。
なんて穏やかな顔で眠る人なのだろう…と、思いながらフランソワーズは、彼の寝顔を、そして呼吸の度に上下する胸を静かにみつめる。

(…そういえば…、兄さんも、こんな感じで眠っていたわね…)

過去を思い出させるこの部屋で、今ここにいるのは兄ではなくジョーであったが、 ジョーの寝顔に兄の穏やかな寝顔を思い出したフランソワーズは、この部屋で朝起きたとき、ジョーなら最初になんて言うのだろう? と、ふと考えていた。

(月並みだけど、「おはよう」?それとも、「フランソワーズ、よく眠れた?」、ジェットみたいに、「よ!おはよう、腹減った〜」かな?アルベルトみたいに……) フランソワーズは、そんな事を考えて一人でそっと微笑んだ。

研究所でのジョーは、朝が苦手なジャンのように、ぶっきらぼうに『おはよう…』と言うだけで、その後の会話は弾まない。
黙って朝食を食べると、ジェットのように寛いでいるわけではなく、席を立ってどこかに行ってしまう。
まともに眠れない生活のせいもあるかもしれないが、もしかすると兄と同じようにジョーも朝が苦手なのかもしれない。

ほんの数ヶ月前のフランソワーズは、昔を思い出すと、それがどんな事であれ、自然と涙がこぼれていたのだが、最近はそうでもなくなっていた。
現に、兄の事を思い出しても、今は以前よりも落ち着いていられる。
思い出す領域を抑制している…、
という事もあるかもしれないが、それもセルフコントロール出来るまでに、冷静になれたということの表れではないかと彼女は思う。
兄に会いたい気持ちや、どうしようもない悲しみは、今は胸の奥深くにあって、それは透明なオブラートに包まれたように薄い膜の中にある。
すぐに涙を流さなくなったのは、思い出がうまい具合に包まれたからなのだろうか…、それとも?

(兄さんは…元気に暮らしているのだろうか…?『あの頃』のような笑顔を誰かに向けて、幸せに生きていてくれたら…)

フランソワーズは、兄がフランスの何処かで、今も元気に暮らしている可能性を信じてそう思っていた。
思い出の中の兄の笑顔は、昔、バレエのレッスンの帰りに何度か兄と待ち合わせをした公園の光景を思い出させた。

(…明日、早く起きてあの公園に行ってみようかな?…)

その公園で、偶然にも兄に会える、そんな可能性はゼロと思ってもいいくらいなのだが、 フランソワーズは、次にいつパリに来れるか分からない自分の身を思い、僅かの可能性を夢みて出掛けることにした。

ジョーの傍に座るフランソワーズの背中を、窓から差し込む月明かりが優しく照らす。
フランソワーズは、背中に暖かい感触を感じながら、寝返りをうったジョーの背中を見つめていた。
そしてずれてしまった布団を、ジョーの身体にそっと掛けなおした。
そのとき僅かに手の指に触れたジョーの腕の感触に、フランソワーズは、その腕に戦場では何度も護られている事を思い出した。
その腕は女性である自分のものとは違い、逞しく、そして傷つきながらも、立ち向かうその背中には、もう何度も励まされている。
自分は第一世代という事を除けば、年齢は代わらないのに、最近ではその言動のすべてに、自分よりも大人びたジョーを感じてしまう。

目の前のジョーがとても大きな存在に思え、そして、今は自分の傍で無防備に眠るジョーを、心の部分では守ってあげたい存在に思え、 フランソワーズは、そっとジョーの傍で瞳を閉じると、祈るように自然と両手を胸の前で合わせていた。

(神様…、もし道に迷うことがあったなら…、私の思いを…、仲間達みんなの絆を…どうか、彼に届けて下さい…。
この先…、私達がもしも戦場ではぐれても…、ジョーがちゃんと『ココ』に帰って来れるように、道しるべとなる光の道と、そして飛べる翼を与えて下さい…。
…この先、なにがあっても、…なにがあっても、彼を守って下さい……)

フランソワーズは瞳を開き立ち上がると、ジョーが寝ている部屋のカーテンを閉め、今度は眠る用意をするために、もう一度バスルームへと向かった。








(おやすみなさい。ジョー…)






フランソワーズ&ジョー




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