=J.line=




今日は風も波とは戯れず、光は風に揺らされることなくまっすぐに部屋へ差し込んでいる。


部屋に、ときおり届く車道を走る車の音は、波の音よりもはっきりと聞こえた。
静まりかえった邸内で、壁時計だけが忙しく走り回る。



先ほどまで、かちり こちり と 走り回る秒針に負けないくらいに
  ぱたぱた と、フローリングに響いた足音がまだ、耳に残っている。



見飽きた雑誌を、ぱらり。と めくる。
ついこの間、発売されたばかりだったけれど、興味があった記事は一文字も逃すことなく読んでしまい 、
今は値段の分を見ているようなもの。






微かに彼女が動いた感触が、した。


「・・・・ん?」


起こしたかもしれない。
咄嗟に持っていた雑誌をその辺に放り出した。

彼女はその音に反応する。





しまった・・・。






彼女の姿を隠していた雑誌が消えて、彼女の躯が少しばかり仰向けになって姿勢を変えたのが見えた。







彼女の額にかかった髪に触れてみた。

彼女の頬に幾筋かの髪がきらりとひかる、それを彼女の耳へと流した。

彼女の柔らかな肩を腕へとなぞるようになでた。






「起きた?」

「・・・・・・」



しっとりとした睫毛が微かに揺れて、隙間から蒼の瞳がのぞく。
愛らしい唇が微笑を象る。




甘えたように。





彼女の言葉は音にしなくても胸に流れ込む。





彼女の髪を、ゆったり と 指に絡めて梳いていく。

彼女の肩に、ふうわり と 触れてみる。

彼女の顔へ、そおっ と 近づいていく。





躯をくの字に折って、彼女の耳元へ寄せた唇。


彼女の首筋から花の香りを吸い込んで目眩がする。





かちり こち・・・・り・・・・





吸い込んだ彼女の香りが時間を止める。






「まだ、いいよ」






り・・・・ かちり こちり







彼女の耳元から離れて、まあるくて華奢なその肩に手を置いた。



柔らかな肌。








膝の上の幸せな重さ。



膝の上の彼女のぬくもり。



揺れて、流れる、亜麻色の髪。



彼女がひとときの夢を楽しめるように、僕は動かない。



ときおり感じる、彼女の寝息は穏やかに。







波も彼女の眠りを邪魔したくない様子で、おとなしい。
遠くで、犬の鳴き声が聞こえた。









世界は動いている。








規則正しい寝息が、僕を包み込む。





包まれる、彼女の香り。

包まれる、彼女の温もり。

包まれる、彼女の吐息。

包まれる、彼女の光。







包まれていく、彼女の世界へ。





もう少しだけ、いい・・かな?
キミをこの膝の上に独り占めして、いいかい?




もう少しだけ。
もうちょっとだけ。



フランソワーズ、もう少しだけ、いい?






ーーーここは・・・・・私の特等席ねーーー




written by ACHIKO sama *
Special Thanks!!




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