
――ああ、この景色を見せたいなぁ。
フランソワーズに。
***
そう思ったのが僕が自分の気持ちを自覚した時だったかもしれない。
いつもの買い出しの帰り道。
たぶん、僕だけが通る道。
そこは、夕陽を見る絶景ポイントだった。
他のみんなはどういうルートを通っているのか知らない。でもきっと、ここは通らないのだろう。
通っていれば話題にならないはずがない。
だって本当に――夕陽が綺麗なんだ。
小高い丘の上で、眼下に街並みが見える。
僕はここから見る景色が好きだった。
夕陽が沈んだ後にやってくる闇。
それにすっぽり包まれるかと思いきや――ぽつぽつと灯ってゆく街の灯。
最初に見た時はなんてことなかった。
だけど、何度か闘いを経験して――そのたびに生きていることの幸せを実感するようになって。
そうして、この灯ってゆく街の灯が愛しくてたまらなくなった。
ひとつひとつの灯の下には必ず命がある。ひとが住んでいる証。
きっと僕もいつかそんな灯のひとつになっているのだろう。
――そうなっていたい。
平和でいることに慣れている街。慣れている人々。
それでいい。
そのために僕はここにいる。
そんな気負いは聞きようによっては恥ずかしいかもしれないけれど、でも僕は本当にそう思ったんだ。
僕がここにこうしているのは平和を守るため。
この街の灯を消さないため。
誰にも僕の存在を知られなくていい。
僕はただ、守りたいのだから――
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