とあるヨーロッパ連戦の金曜日。

いつものように早朝にサーキット入りしてモーターホームに向かっていると、
今日はやけにあちこちで各チームのメカニック達がレッドブリテンを読んでいる。

「THE RED BULLETIN」はレッドブルチームがグランプリ中毎日発行している速報新聞みたいなもの。
それでもこんなに一斉にみんなが読んでいるのは珍しい光景だった。

・・・そのうえなんだか不自然に自分に向けられる視線も気になる。
さっきは顔見知りの地元消防士が意味ありげな笑顔を浮かべて肩を叩いていった・・・。

首をひねりながらモーターホームに着いたジョーは
そこでレッドブリテンを手渡され、自分が”話題”の中心になっていることを知ったのだった・・・。


＊　＊　＊　＊　＊


話はさかのぼること水曜日。

ジョーの所属チームメカニック主催、チャリティパーティーが開かれた。
このパーティ、「会費28ユーロ、会費内で衣装を買って着せたい相手を指名、
指名されたら必ず着なくてはいけない」というレギュレーション。
ただし買うのは古着なので、残った大半の会費を募金にまわすというしくみ。
ジョーはパーティーの細かな内容を知らされず、なかば強引に参加させられたのだった（ハメラレタ、ともいふ）

そして、衣装に”女装”の決まりはなかったのにナゼか女装ばかりが集まって・・・
ウケにウケたパーティーはおおいに盛り上がったのでした。

レッドブリテンに掲載されていたのは、このパーティーの模様。
パドックで見慣れた顔が、女装で楽しく大騒ぎしているショットが多数収められていて、
なかでも「DRAG RACERS」の見出しで一際デカデカと載った写真中央にはジョーが・・・


ちなみに酒代はマネージングディレクター、サミュエル・アーデット氏のポケットマネー。
いやー、アーデットさん、太っ腹ーー！