信じられるものなんてなにもなかった。
たぶん、あの時までは。
そのとき僕は混乱の極致にいた。
ふりそそぐ銃弾をよけ、それに追い立てられるように、
-----そして、頭の中に響く声にみちびかれてここまできた。
引きあわされた人たちも、聞かされた話もすぐには受け入れられなかった。
ただ、爆風の熱さや鼻をつく硝煙のにおいが
否応なくこれが現実であることを突きつけてくる。
そして
粉塵のきれた先に彼女がいた。
わずかに唇をかみ、彼方を見据える強い瞳。
僕はそのまま視線をそらすことができなかった。
Winter 2007
back *
|